One year left -家族ごっこ-
「俺もバイト辞めたい」


彼は両手を高く上げて、気だるげに背を伸ばした。


「お母さんは、再婚とかされないんですか?」


「さぁ?男は取っ替え引っ替えだし、今んとこ再婚する気はないかもな」


「取っ替え引っ替え……」


蓮己さんの複雑な家庭環境が、言葉の端から静かに垣間見える。


それ以上深く踏み込んでいいのか分からなくて、私は小さく口ごもった。


「あ、ごめん。俺の母親、スナックやってんの。夜の仕事ね。んで、俺のバイトはそれの黒服」


「高校生なのに、いいんですか……?」


「普通はダメでしょ。でもほぼ裏方だからさ。あの人的にも俺のほうが使いやすいだろうし」


初めて知る彼の日常の内情に、胸のなかが少しだけ冷たくなる。


「バレたら、逮捕とかされないんですか?」


「店はヤバイんじゃない?俺は最悪、退学かな」


蓮己さんはどこか他人事のように、あっけらかんと言った。
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