One year left -家族ごっこ-
「私に話していいんですか?もし私がバラしたらとか……考えないんですか?」


動揺を隠せない私を見て、彼はどこか穏やかな表情を浮かべた。


「言わないでしょ、萩花は」


確信を帯びた声が鼓膜を揺らした直後、彼はゆっくりと、私の肩に頭を預けてきた。


不意にかかった男の子の重みと、制服の生地越しに伝わる微かな体温。


驚きで、私の全身の筋肉が瞬時に硬直していく。


「俺、疲れたんだよね……」


耳元に直接、蓮巳さんの低く気だるげな吐息が触れた。


「寝る時間も少ないし、自由な時間も少ないし」


蓮己さんが自分自身と重なる。


彼もお母さんのために、働いているのだろうか。


そう思うと、無機質に突き放すこともできなくて、私は動けないまま彼の言葉を静かに胸のなかへ閉じ込めていた。


「一応留年したけど、別に辞めてもいいかなっても思ってた」


「でも、高校は卒業したほうがいいんじゃ……」


蓮己さんはゆっくりと頭を持ち上げた。


「うん。今は萩花がいるから、毎日学校に来てるよ」


その声はひどく掠れていて、今にも消えてしまいそうだった。


もしも私がここからいなくなってしまったら、彼は本当に消えてしまうのではないか。


そんな、引き留めたくなるような危うさがそこにあった。
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