One year left -家族ごっこ-
バイト中も蓮己さんの言葉が頭から離れなくて、今日が最後の日だというのに、ずっと上の空だった。


帰り際、店長やスタッフに挨拶を済ませて、割り切れない小さな曇りを抱えたまま、外へ出た。


私の気持ちを置き去りにするように、夜の空気はひどく澄み切っていた。


今日でもうここに来ないのだという実感は、まだどこにも湧いてこない。


明るい繁華街の喧騒(けんそう)の中で、私はひとり、星の見えない黒い夜空を見上げていた。


蓮己さんは今、まだ働いてるんだろうな。 


「おつかれ」


低く聞き慣れたその声に、鼓膜が小さく反応する。


振り向くと、ガードパイプに腰を掛けた碧くんの姿を、すぐに見つけ出していた。
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