One year left -家族ごっこ-
こちらに向かって歩いてくる彼は、黒いパーカーにジーンズを合わせただけのラフな装いなのに、このまばゆい繁華街で誰よりも目立っているように見えた。


すれ違う女の子たちが、一斉に碧くんのことを振り返っていく。


「どうして、ここにいるの?」


「あんたのこと待ってた」


「どうしてバイト先が分かったの?」


「おばさんから聞いた」


わざわざお母さんに私のバイト先を尋ねてまで、彼は一体ここで何をしようとしているのだろう。


何か裏があるのではないかと、私は無意識に眉をひそめていた。


「隣の市で通り魔が出たらしい。犯人は逃走中で、親父があんたの帰りが心配してた。だから俺が迎えに行くことになっただけだ」


ちょっと不満そうに、彼は片方の眉を上げた。


「だから、安心しなよ」


そう短く付け加える。


「……ごめん」


「別に」


「何か企んでるのかと思っちゃった」


「何をだよ」


「わざわざ来てくれてありがとう」


「別に」


「碧くんがいたら、通り魔も逃げていきそうだもんね」


圧倒的な彼の身体を思い描き、私は少しだけ顔を伏せて、小さな笑みをこぼした。
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