One year left -家族ごっこ-
同居のこと、もっとちゃんと説得すれば良かったかな。


絶対に一緒に暮らしたほうがいいに決まっている。


「あんた、ずいぶん必死だな」


上から降ってきた声に、はっと我に返った。


「……なにが?」


「同居」


重い音を立てて、彼が背後でドアを閉めた。


退路を断つように碧くんがドアを背にして立ち、私は真っ白な部屋の真ん中で、彼と正面から向かい合う。


「同居なんか二人の話だろ。したけりゃすればいいし、俺らに気を使うなら、しなければいいと思うんだけど」


彼が腕を組んで、呆れたように私を見下ろしている。


「冷たいんだね」


押し潰されそうな圧迫感に負けじと、切れ長の目をじっと睨み返した。


「冷たい? 普通の考えだろ」


「普通なら、親のために協力するのが子供の役目でしょ」


「そうか? 二年後、俺らに気を使わず、二人で住んだほうがいいんじゃない?」


「嫌だよ。私が卒業するまでの一年間、どうしても自分の目でお母さんの幸せを見届けたいの」


心臓が、息苦しいほどの高鳴りを上げて跳ねた。


言わなくていいことまで、口が勝手に滑り落ちていた。
 

部屋のなかに、凍りつくような静寂が満ちていく。


碧くんの瞳が、私の内側を見透かそうとするように細められる。


ひびが入るような居心地の悪さに耐えかねて、私は弾かれたように、何も置かれていないフローリングの床へと視線を逃がした。
< 13 / 406 >

この作品をシェア

pagetop