One year left -家族ごっこ-
「で、何があった?」


背中から響く彼の声に、私は小さく息を吐き出す。


「何もない。……ただ、学校の友達を心配してるだけ」


「なんで?」


「今日聞いたんだけど、その人、スナックで働いてるの」


「高校生は違法だな」


「お母さんのお店なんだって」


「へぇ。未成年で自分の子供を働かせるなんて、正気じゃないと思うけど」


碧くんの言葉はいつだって容赦がない。


「バレたら、最悪の場合、退学なんて言うから」


「でも本人が腹くくってるなら、それでいいんじゃない?」


「……また、そんな冷たいこと言う」


正論の冷たさに、私は少しだけ癪(しゃく)に障る。


効かない攻撃だと分かっているけれど、私は自転車を漕ぐ彼の硬い脇腹を、服越しに小さくつねった。


「痛くない」


「知ってる」


「くすぐったくもない」


「筋肉って、神経ないの?」


「あるんじゃない?」


「じゃあ、こっちは?」


意地になって、今度は反対側の脇腹を同じようにつねる。
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