One year left -家族ごっこ-
「蓮己さん!」


込み上げる嬉しさに、気づいたときには大きな声で彼の名前を呼んでいた。


蓮己さんがゆっくりと私のほうを振り返る。


周囲の視線がふいに集まった気配がしたけれど、今の私にはそんなこと少しも気にならなかった。


「お待たせしてすみません」


「俺も今きたとこだよ」


「今日も髪、結んでるんですね」


「ラクだからね」


見慣れたハーフアップの隙間から、今日は耳元に小ぶりなシルバーのピアスが覗いていた。


駅前の強い日差しを浴びて、金属の尖った光がシャープに揺れる。


デニムのジャケットとジーンズをセットアップのように着こなした姿は、洗練されていてお洒落だった。


「蓮己さん、いつもと雰囲気が違いますね」


「萩花こそ、私服だと雰囲気違うね」


蓮己さんが、私の姿をまじまじと見つめる。


「俺のイメージだと可愛い系かと思った」


「それだとますます幼く見えちゃいます」


「いいじゃん、可愛くて」


「……童顔だって自覚してるので」


「だから大人っぽいワンピ?似合ってる」


まっすぐに褒められて、私の指先がかすかに強張り、ワンピースの裾をそっと握りしめていた。


「蓮己さんのほうこそ、おしゃれです……」


視線を泳がせながら、私はそう返すのが精一杯だった。
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