One year left -家族ごっこ-
蓮己さんは、すでに近くのパスタ屋さんを予約してくれていた。


もし碧くんだったら、店はあんたが決めてよとか言ってきそうなのに……


意識のなかに不意に割り込んできた彼を、私は慌てて思考の隅へと追いやる。


お昼時で混雑する時間帯だったけれど、私たちはスムーズに席へと案内された。


店内は、休日を楽しむ女性客の姿で埋め尽くされている。


彼の姿をチラチラと追う周囲の視線を受けながらも、蓮己さんは平然とした顔で椅子に腰掛けた。


「男性のお客さん少ないですね」


「ここ、女の子にめっちゃ人気のパスタ屋だから。萩花に喜んでもらいたくて」


「詳しいんですね」


「女ばっかの仕事場にいれば、嫌でも情報が入ってくるからさ」


店員さんから差し出されたメニュー表を受け取る。


どこか落ち着かない緊張のせいで、私の指先はいつもより少しだけ強張っていた。


「蓮己さんは何にしますか?」


「先に選んでいいよ」


ページをめくると、色鮮やかで美味しそうなパスタの写真ばかりが並んでいる。


「一つに決めるのが大変です……」


「じゃあ萩花の食べたいもの二つ頼んで、シェアする?」


蓮己さんはテーブルの上で両手を組み、私の瞳を覗き込むようにして、距離を詰めてきた。
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