One year left -家族ごっこ-
ゲームセンターの中には、所狭しとクレーンゲームの機械が並んでいた。


ガラスの向こうには、色鮮やかで可愛いぬいぐるみがたくさん詰め込まれている。


明滅するきらびやかな照明と、大音量で鳴り響く電子音が、私の現実感をぼんやりと奪っていくようだった。


「何がほしい?」


「いらないです」


「いらない、は悲しいな」


「そうじゃなくて、蓮己さんが欲しいものを取ってください」


「それじゃつまらないでしょ。萩花に取ってあげたいから」


「じゃあ、私が取ってあげます」


「俺に取らせてよ。今日、会ってくれたお礼に」


蓮己さんにお金を使わせてばかりいる状況に、私の心は申し訳なさでいっぱいになっていた。


寝る時間も、自分だけの自由な時間も擦り減らして、夜の街で彼が懸命に稼いだ大切なお金なのに……


だけど、そんな私の心配を置き去りにするように、蓮己さんは鮮やかな手際でクレーンを操り、すぐに景品を仕留めてみせた。


取り出し口から現れたのは、大きなキティちゃんのぬいぐるみだった。


私は、自分の部屋にぬいぐるみなんてひとつも持っていない。


想像以上の愛おしさが胸に込み上げて、私はそれを両腕で強く抱きしめた。


腕の中に収まる、驚くほどに柔らかくて優しい手触り。


いつの間にか、私の部屋から消えていたはずの子供の日常が、不意に私の両腕の中に帰ってきたような気がした。


「ありがとうございます。大切にします」


「大袈裟だなぁ」


「他に欲しいもの、ない?」


蓮己さんはどこか得意げに、優しく目を細めた。
< 130 / 354 >

この作品をシェア

pagetop