One year left -家族ごっこ-
「あー!蓮己だ」


またしても背後から、数人の女性の声が降ってきた。


「デート中?」


「年下?」


「新しい彼女?」


容赦のない質問責めに遭っている蓮己さんの姿に、私はそっと一歩下がり、彼の大きな背中の後ろに身を隠した。


腕の中のキティちゃんをじっと眺めながら、ただその場が過ぎ去るのを待つ。


店内には、彼女たちのきらびやかな笑い声が響いていた。


しばらくして、女性たちが立ち去った。


「ごめん、元クラスメイト」


蓮己さんは、私の顔色をそっと窺うようにして、その整った目元を和らげた。


「それで、欲しい景品は決まった?」


次々とクレーンゲームを見ながら歩いていく彼の後ろ姿を、私は遠くから見つめる。


私がいなければ消えてしまいそうだなんて、ただの私の思い上がりだったみたいだ。


私の知らない日常のなかに、当たり前のような彼の居場所がいくつも転がっている。


立ち止まったままの私に気がついて、彼は歩みを止めた。


「どうしたの?」


蓮己さんが私の元へと戻ってくる。


「つまんない?」


私は小さく首を横に振った。


騒がしい電子音を頭のなかで遮断するように、彼をまっすぐに見つめる。


「実は今日、元気のない蓮己さんが気になって会ったんです。だけど、何もしてあげられなくて、ごめんなさい」
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