One year left -家族ごっこ-
「萩花」


初めて碧くんに名前を呼ばれて、私の心臓が瞬時に脈打った。


耳に届いたその静かな響きに、私はかすかな息の苦しさを覚えながら振り返る。


「なに……?」


「あの男に、名前で呼ばれてるんだ?」


碧くんが腕組みをして、私の部屋の壁に背を預けた。


窓から差し込む西に傾いたオレンジ色の斜陽が、彼の琥珀色の瞳をひどく冷徹に射抜いている。


「そうだよ」


「好きなの?」


直球の問いかけに、私は息を呑んですぐに首を横に振った。


「毎日、一緒に課題してるだけ」


「二人きりで?」


「うん」


「どこで?」


「放課後の教室で」


「ふーん」


碧くんは低く声を漏らすと、私の枕元に置かれたキティちゃんのぬいぐるみを、昏(くら)い横目で見据えた。
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