One year left -家族ごっこ-
「……どうして、来てくれたの?」


「つけてた」


一瞬、彼の言葉の意味が理解できず、頭の中の時間が数秒だけ止まってしまう。


「お昼から?」


「まあな」


「ずっと?」


「ああ」


「……暇じゃなかった?」


「暇だった。でも、俺の感は当たる。男だった」


そう言って、碧くんはどこか冷ややかに息を吐き出した。


「ラブホは想定外だったけど」


「入るつもりはなかったよ」


「俺が止めなきゃ、お前は入ってた」


「ううん、断ってた」


「いや、あの男の口車に乗せられただろうな」


壁から背を離した碧くんが、私に向かって静かに歩みを進める。


大きな身体が影となって、私の世界のすべてを覆い隠すようにじりじりと詰め寄ってきた。
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