One year left -家族ごっこ-
「部屋に入ったら、終わり」


碧くんが低い声でそう呟いた瞬間、私の視界は瞬時に反転した。


身体ごと強引に宙へ抱き上げられて、驚きに悲鳴をあげることさえ忘れて息を呑んだ。


「降ろして」


「自力で降りてみろ」


必死に脚をばたつかせたけれど、碧くんの身体に抗えるはずもなく、彼の腕はびくともしない。


そう抗っている間に、私はベッドの上へと落とされ、そのまま押し倒されていた。


軋むマットレスの音と、重なるようにして、彼の大きな身体が私の視界のすべてを完全に塞ぐ。


「俺も眠いから、一緒に寝てくれないか?」


「碧くんは眠くないでしょ」


ペチッと彼のおでこをはたく。


「眠い」


私の上に覆い被さるように、容赦なく彼の体重がかけられる。


「重たい」


鍛え上げられた、硬くて逃げ場のない圧倒的な質量。


私は必死になって、碧くんの広い肩を両手で押し返そうと試みた。


けれど、次の瞬間には両手首を彼の大きな掌で丸ごとまとめて押さえつけられ、私はベッドの上に完璧に縫い留められる。


「このワンピース、俺の前で着たことない」


上から私を見下ろす彼の琥珀色の瞳が、夕暮れの細い光を浴びて、静かに揺らめく暗い熱を孕んで燃えていた。


「着る機会がなかったから……」


「あの男に見せるために選んだの?」


「そういうわけじゃ……」


言い終わるよりも早く、碧くんの顔が至近距離まで迫ってきた。
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