One year left -家族ごっこ-
反射的に顔をそらすと、彼の唇が、私の剥き出しになった耳たぶへと触れた。


「ずいぶん大人っぽいけど」


鼓膜を直接揺らすような低い声で囁かれて、私の全身が小さく身をすくめる。


「碧くん、くすぐったいからやめて……」


彼は私の言葉を優しく聞き流して、耳元の柔らかい皮膚へ、次々と吸い付くような口づけを落としていく。


「やめてってば……」


掴まれた両手にどれほど力を込めても、大きな壁を引いているかのような絶望的な体格の差は埋まらない。


「その程度じゃ、逃げられない」


「じゃあ、手を離して……」


必死に抵抗している間も、碧くんは私の耳をもてあそぶ。


私は声を殺し、シーツの上でいくら身をよじっても、彼の腕のなかから逃れる術はどこにもなかった。


「ほら、早く逃げないと」
 

耳たぶを鋭く甘噛みされて、身体が激しく跳ね上がる。


「やだっ……!」
 

「何が嫌なの?」


「やめて!」


「何を?」


遮るもののない自室の空気に、私の乱れた呼吸と、甘く濡れた音だけが、生々しいほど鮮明に響き渡った。


「耳、やめて……」


再び甘噛みを刻まれて、切なさが全身へ一気に駆け巡るように、私の身体が強張っていく。


「やめてほしいなら、自分で何とかしなよ」


私の抵抗をまるで相手にしないように受け流しながら、彼の熱い舌先がゆっくりと耳の輪郭をなぞっていく。


私の呼吸も、思考のすべてが、彼の包み込むような熱の中に飲み込まれていくようだった。
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