One year left -家族ごっこ-
もう、くすぐったいのか気持ちいいのかさえ分からない。


全身の力が完全に抜けて、自分のものではないような頼りない吐息が口元から漏れ出してしまう。


身体が、彼の存在に逆らえずどんどん熱を帯びていく。


このまま、彼の体温にすべてを融かされてしまいそうだった。


「……あの男に、そんなだらしない顔、見せるつもりだったの?」


碧くんが冷たい目つきで、じっと私を見下ろす。


「それとも、誘ってる?」


肌を這うような低い声に、私の胸の鼓動が激しく高鳴り、身体の芯が震えた。


「あの男に、こうゆうこと、されたかったんだ?」


私の防壁が、彼の容赦のない言葉によって剥ぎ取られていく。


私は最後の力を振り絞って、拘束されていた両手を必死に振りほどき、碧くんの硬い胸を力いっぱい押し返した。


「こうゆうことするのは、碧くんでしょ!」


だけど、私の最後の抵抗も虚しく、彼はびくともしなかった。


「あの男は、これ以上のことをするつもりだった」


有無を言わせない厳しい声の直後、首筋に、彼の熱い唇が吸い付いた。


皮膚が強く引き絞られるような、鋭い痛みが鮮烈に走る。


そして碧くんは、私の首筋からゆっくりと唇を離した。
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