One year left -家族ごっこ-
次の日の朝、蓮己さんはいつも通り普通に登校してきた。
だけど、その目元は深く前髪に隠されていて、どのような顔色をしているのかまでは窺(うかが)えない。
私は昨日のことをきちんと謝り、お会計の分のお金を返すつもりでいた。
放課後のチャイムが鳴り響くのを待って、私は彼の席へと近づき、静かに声をかける。
「一緒に課題しませんか?」
「……一緒にしたら、彼氏に怒られるんじゃない?」
蓮己さんは、どこか呆れたような響きを伴って言った。
そうだった。
昨日の出来事があまりに鮮烈で、私の頭からこぼれ落ちていた。
碧くんが、私の彼氏だという嘘をまたひとつ、吐いたのだった。
「昨日、途中で帰ってしまってすみません」
「彼氏がいるのに、俺と会うほうが問題だと思うけど」
蓮己さんは深くため息をついた。
「まあ、俺も人のこと言えないけどさ」
「彼女、いるんですか?」
「同棲してる」
衝撃的な言葉に、私は言葉を失って小さく息を呑む。
「けど、最近喧嘩ばっかりでさ。萩花に逃げたかっただけかも」
蓮己さんが、私の前で小さく頭を下げた。
「……ラブホに連れて行こうとして、ごめん」
「いえ……」
「許してくれる?」
まっすぐに向けられた彼の茶色の瞳には、寂しげな、けれどすべてを綺麗に無かったことにしようとする、大人の男の子のずるい弱さがどこまでも透き通って見えた。
「はい」
私はそっと息を吐き出すと、どこか諦念の混じった、微かな笑みを浮かべた。
だけど、その目元は深く前髪に隠されていて、どのような顔色をしているのかまでは窺(うかが)えない。
私は昨日のことをきちんと謝り、お会計の分のお金を返すつもりでいた。
放課後のチャイムが鳴り響くのを待って、私は彼の席へと近づき、静かに声をかける。
「一緒に課題しませんか?」
「……一緒にしたら、彼氏に怒られるんじゃない?」
蓮己さんは、どこか呆れたような響きを伴って言った。
そうだった。
昨日の出来事があまりに鮮烈で、私の頭からこぼれ落ちていた。
碧くんが、私の彼氏だという嘘をまたひとつ、吐いたのだった。
「昨日、途中で帰ってしまってすみません」
「彼氏がいるのに、俺と会うほうが問題だと思うけど」
蓮己さんは深くため息をついた。
「まあ、俺も人のこと言えないけどさ」
「彼女、いるんですか?」
「同棲してる」
衝撃的な言葉に、私は言葉を失って小さく息を呑む。
「けど、最近喧嘩ばっかりでさ。萩花に逃げたかっただけかも」
蓮己さんが、私の前で小さく頭を下げた。
「……ラブホに連れて行こうとして、ごめん」
「いえ……」
「許してくれる?」
まっすぐに向けられた彼の茶色の瞳には、寂しげな、けれどすべてを綺麗に無かったことにしようとする、大人の男の子のずるい弱さがどこまでも透き通って見えた。
「はい」
私はそっと息を吐き出すと、どこか諦念の混じった、微かな笑みを浮かべた。