One year left -家族ごっこ-
少しして、碧くんが人混みを割って戻ってきた。


「はい」


差し出されたのは、結露で濡れたペットボトルの麦茶だった。


「あれ? 碧くんのは?」


「俺はいらない。車の中で飲んでたから」


「……ありがとう」


私のためだけにわざわざ足を運んでくれた。


そう気づいた瞬間に呼吸が止まり、心臓が激しい高鳴りを刻み始める。


動揺を悟られないように、冷たい麦茶を喉へと流し込んだ。


溢れそうになる息を整えながら、ちらりと彼の顔を盗み見ると、タイミング悪くまっすぐな視線とぶつかってしまう。


「こぼすなよ」


碧くんの口元が、わずかに緩んだ。


その眼差しがあまりにも優しくて、それ以上彼を見つめていられなくなり、逃げるようにボトルのキャップを握りしめていた。
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