One year left -家族ごっこ-
「あんたが喜ぶなら、俺は何だってするよ」


碧くんの声が、耳元に甘く滑り込んできた。


その瞬間、私は息を呑んで胸を突かれた。


吸い寄せられるように顔を上げると、彼はいつも通り、どこか傲慢なほど自信たっぷりに私を見下ろしていた。


「それは、……ありがとう」


動揺を悟られまいと、掴んでいた彼の腕から、ゆっくりと身体を離す。


私が喜ぶなら何だってする。


何だってするなんて、あまりにも大袈裟すぎる。


そこまでして私を喜ばせたい理由なんて、あるはずがない。


「席、空いてきたな」


思考を断ち切るように、碧くんが視線をレストランのガラス越しへと向けた。


「ほ、ほんとだ。行こ行こ」


冷静を装って、わざと大きな歩幅で彼の前を歩き出す。


背中に受ける彼の視線から逃げるように、何度も深く息を吸い込んだ。
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