One year left -家族ごっこ-
「この前、碧くんは私に、何を隠してる?って聞いたよね」


遠くで、閉園を告げる音楽が流れ始めた。


楽しげなメロディに急かされるように、周囲の人々が群れをなして出口へ向かって歩いていく。


「……私が、お父さんを殺したの」 


隣で、碧くんの気配が強烈に凝固したのがわかった。 


その刹那、一匹のフラミンゴが片方の翼を大きく広げて走り出した。


助走をつけ、そして、冷たい鉄柵に鈍い音を立てて激しくぶつかる。


一瞬だけ、高い空へ飛び立とうとしたのかもしれない。


ピンクの羽が、無惨に虚空を舞った。 


「お母さんは私を恨んでる」


彼の視線が、私の横顔を鋭く射抜いている。 


「だから、私は遠くに行くの。二度とお母さんの目に触れないように」


だけど、私は決して碧くんを見なかった。


ただ、鉄柵の向こうでうずくまる鳥を見つめ、乾いた爪を手のひらに食い込ませる。


「これが私の償いなんだ」


彼が今、どんな顔をして私を見下ろしているのか。 


それが、狂おしいほど怖くて見れなかったから。
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