One year left -家族ごっこ-
今、言うべき話じゃないのはわかってる。


でもなぜだろう。


彼にだけは、聞いて欲しかった。


「碧くん! 萩花!」


背後から、お母さんの声が響いた。


振り返ると、お母さんとおじさんが並んでこちらへ歩いてくる。


その表情は、ひどく幸せそうな笑顔だった。


私は手を振って、お母さんの元へ駆け寄ろうとした。


「萩花」


名前を呼ばれた瞬間、碧くんの声が熱い引力となって、私の足元を強く引き止めた。


耳に届いたその確かな響きに、私はかすかな息の苦しさを覚えながら振り返る。


彼はとても真剣な、見たこともない眼差しで私を凝視していた。


「……おまえが殺したわけじゃない」


低く落とされたその声は、あらかじめ、私の過去を知っているような口ぶりだった。


きっと、おじさんを通して聞いていたんだね。


彼の優しさを痛いほど感じながらも、私はただ、小さく困ったように眉を下げて、悲しい笑みを返すことしかできなかった。


碧くんから視線を逸らして、私はお母さんが笑顔で待つ場所へと走り出した。
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