One year left -家族ごっこ-
帰り道、夕紗からラインが届いた。


[明後日、何か予定ある?]


何もないよ、と返信すると、すぐに次の吹き出しが跳ねる。


[彼氏ん家の庭でバーベキューするけど来れる?]


「……お母さん、明後日、友達と会ってもいい?」


助手席に座るお母さんの背中に、私は声をかけた。


「もちろん、いいわよ」


振り返ったお母さんは、優しく微笑む。


「ありがとう」


こんなに私を自由にさせてくれて。


胸元でフラミンゴのぬいぐるみをきつく抱きしめながら、夕紗に承諾の返事を出した。


[十時頃、彼氏の車で迎えに行く]


夕紗の言葉にスタンプを一つだけ返し、画面を暗転させる。


車窓からは、夕方の斜陽が差し込んでいた。


オレンジ色の西日が、狭い車内を真っ二つに切り裂いている。


碧くんはその光の境界線の向こう、窓際に肘をついたまま、微動だにせず眠っていた。


その傾いた光をいっぱいに浴びた彼のシルバーの髪が、あどけないほど柔らかく、暖かな光をまとってきらめいている。


その眩しさから、私は静かに顔を背けた。


瞼の裏に焼きついた残像を振り払うように、深く、目をつむった。
< 169 / 354 >

この作品をシェア

pagetop