One year left -家族ごっこ-
「振ったんだってな」


「そんなことまで聞いたの?」


「あぁ」


「振ったって、告白されたわけじゃないよ?いいなって思ってるって言われたから、彼氏を作る気はないって答えただけ」


「同じことだろ」


碧くんがソファからゆっくりと起き上がり、背筋を伸ばして座り直した。


「やっぱり俺に水ちょーだい」


「わかった」


私は新しいグラスに冷たいミネラルウォーターを注いでリビングへ持っていく。


「はい」


手渡そうとしたけれど、彼は手を伸ばそうとはしなかった。


「もっとこっちにきてよ」


少し低くなった声で、そう命令される。


言い返すこともできず、私は碧くんの正面に一歩進んで、もう一度グラスを差し出した。


だけど彼はやっぱりそれを受け取らず、座ったまま私のお腹に抱きつくようにして、逞しい腕を回してきた。


「……なにしてるの」


服越しに伝わるその身勝手な重みに、私は思わず喉の奥で小さなため息を噛み締めていた。


「別に、なにも」


「どうして抱きつくの」


「どんな顔するのか、見てるだけ」


腰を引き寄せられたまま、琥珀色の瞳に、下からじっと見上げられた。


その眼差しに見つめられ続けるうち、耳の奥でドクドクと心臓の音が大きくなり、自分の顔がゆっくりと、確実に赤くなっていくのが分かった。
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