One year left -家族ごっこ-
「手を離して」


腰に腕を回されたまま、私は身体をもがいた。


「水、こぼれるよ」


「こぼれるから、早く手をどけて」


「こぼさなければいいだろ?」


碧くんは平然と言い放ち、お腹を抱きすくめたまま動こうとしない。


逃げることもできず、私は恥ずかしさに耐えきれなくなってしまう。


「碧くん、怒るよ」


「やだ」


「離して」


「やだ」


子供のように返されて、私はたまらずリビングのドアのほうを確認した。


「……家で、こういうことしないで」


もしもお母さんやおじさんが起きてきたら、そう思うと気が気じゃなかった。


「俺は彼氏にしてくれないの?」


碧くんの口から、今度はどこか切なく甘えたような声が漏れる。


「碧くんは弟でしょ」


「俺のこと、好き?」


「弟として好きだよ」


「俺は、萩花が好きだよ」


はっきりと紡がれたその言葉と一緒に、私の胸の辺りにぎゅっと顔をうずめられた。
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