One year left -家族ごっこ-
「たぶん、一目惚れに近いものだった」


琥珀色の瞳が、すぐ目の前でじっと私を見つめる。


強すぎる視線を遮るように、たまらずに目を伏せた。


「碧くんは勘違いしてる」


「勘違い?」


「碧くんが好きなのは、私じゃなくて、私のダンスだよ」


自分の心に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。


ゆっくりと瞼を開き、碧くんを見据えた。


彼は少しだけ目を見開いたあと、不満そうに眉間にじわじわと皺を寄せた。


「……例えきっかけがそうだったとしても、今あんたを好きなことに変わりない」


「ううん、私を好きなわけじゃない」


突き放した、その瞬間だった。


両肩を掴まれ、そのまま背後のソファへと勢いよく押し倒される。


背中にクッションの柔らかい弾みを感じると同時に、彼の大きな身体が上から覆いかぶさってきた。


視界の全てが碧くんになる。


「あんたに俺の何が分かる?」


低い声が降ってくる。


そっと頬を指先で撫でられた。


「碧くんだって、私を何も知らない」


言い返すと、彼の指が頬から首すじへとゆっくり滑り、鎖骨のくぼみの上でピタリと止まる。


皮膚に伝わる指先の、微かな震え。


「だったら、教えて。あんたの考えてること、全部知りたい。……もっと、俺を頼れよ」


見下ろしてくる碧くんの表情は切なげに歪んでいた。


必死に、すがるような目が私を捉えて離さない。


完璧だったはずの男が、目の前で無残に形を崩していく。
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