One year left -家族ごっこ-
自転車はいつもと同じ、見慣れた夜の景色をスイスイと滑り出していく。


夜になっても引かないアスファルトの熱気が、重苦しい熱風となって頬を撫でた。


「あんたが言ったんだろ」


ペダルを漕ぐ規則的な音の合間、ぽつりと碧くんが呟いた。


「何を?」


「俺が好きなのは、あんたのダンスだって」


背中越しに響く低い声。


「言ったけど……」


「だから、俺はあんたのダンスを見てる。ただ、それだけの話」


至極当たり前のことのように言う。


それに納得しかけている自分がいる。


ダンスを見るのは、彼の自由だ。
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