One year left -家族ごっこ-
いつもの見慣れたコンビニの明かりを通り過ぎ、もうすぐ家につく手前。


キィ、と微かなブレーキ音を立てて、碧くんは自転車を止めた。


そこは、錆びかけた柵と細い木々に囲まれた、あの公園の前だった。


「花火しない?」


自転車のハンドルを握ったまま、碧くんがふり返る。


「花火……?」


碧くんは私に降りるよう促すと、自転車をスタンドで止めた。


ガチャン、と硬い金属音が夜の闇に響く。


彼はそのまま、迷いのない足取りで夜の公園の中へと歩いていった。


追うようにして入った街灯の下。


彼は肩から下ろしたスクールバッグのジッパーを引き、中から透明なビニール袋を取り出した。


カサリ、と乾いた音を立てて、その封が切られる。


開いた袋の口からのぞいたのは、赤や青、黄色といった鮮やかな和紙で縒(よ)られた、細い線香花火の束だった。


碧くんの大きな手がその中に触れ、一本の細い紐を選(え)り分けるようにして取り出す。


私の手の甲に、彼の手のひらが重ねられる。


彼は私の指を優しく包み込むと、その中に線香花火のざらついた紙の紐を、そっと残すようにして握らせた。
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