One year left -家族ごっこ-
碧くんがすとんとその場にしゃがみ込む。


長い手足を持て余すように丸めて、手際よく小高い砂の山を作り、真剣な手つきでその頂点に蝋燭を刺し、ポケットから取り出したライターで火をつけた。


カチッ、という微かな音と共に、小さな火がともる。


ゆらゆらと頼りなく揺れるオレンジ色の火が、碧くんの端正な横顔と、少し伏せられた睫毛を淡く浮かび上がらせた。


「おいで」


耳の奥にそっと染み込んでくる、柔らかな声。


言われるままに、その場にしゃがみ込む。


吸い寄せられるように手を伸ばし、花火の先端をゆらめく蝋燭の炎の中へと沈めた。


じ、じ、と紙が焦げる小さな音がして、火がついた。


紐の先にぽつりと灯った朱色の丸を、私は息を詰めて見つめていた。


まるで夜の闇のなかにそっと産み落とされた、温かな命の灯火のようだった。


パチ、パチ、と目の前で優しく爆(は)ぜる、火花の粒子。 


思わず胸がときめく。


とても繊細で、どこか泣きたくなるほど美しい光だった。


「綺麗だね……」


言葉が、内側から自然と溢れ落ちる。 


パチパチと四方に弾ける無数の細い光線が、私の瞳をあたたかく満たしていく。


暗闇のなかで、碧くんもその光を見つめていた。 


けれど、美しさを知ったのと同時に、それがすぐに終わることも知る。


眠りにつくように光の筋が細くなり、最後にはぽとり、と音もなく火の玉が地面に落ちた。
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