One year left -家族ごっこ-
喉のすぐ下が、チクリ、と痛んだ。


モヤモヤとした感情が、胸の真ん中からゆっくり広がっていくのが分かる。


そんなに見ないでほしい。


なんだか、すごく嫌だ。


言葉にできない不快感が、じわじわと胸の隙間を埋めていく。


周囲の視線を集めてしまう彼のこと。


そんなの、最初から分かっているはずだった。


だけど今この瞬間、彼の剝き出しの身体が誰かの視線に晒されている事実が、ただ、面白くなかった。


私は歩調を早めて、碧くんの前に回り込む。


その足を無理に止めさせた。


「……ちょっと、屈んで」


命令するみたいな声が出た。


碧くんは一瞬だけ不思議そうに瞳を瞬かせたけれど、理由は何も尋ねてこない。


ただ、私に従う。


すぐに首(こうべ)を垂れるように、すんなりと上体を折って、私の目線まで顔を下げてくれた。


誰も近づけない猛獣の鎖を、いま私だけが握っている。


そんな、歪んだ支配欲に脳が甘く痺れる。


私は腕に抱えていたタオルを広げ、彼の広い肩へと、勢いよくばさりと掛けた。
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