One year left -家族ごっこ-
その間も、碧くんは長い手足を手際よく動かし、どんどんカニを捕まえては、これ見よがしに私に見せびらかしてきた。


彼のそんな子供じみた態度が、どこか可笑しくてたまらない。


カニを諦めた私は、少し視線を落として別の生き物を探した。


岩の窪みに、小さな巻き貝が動いているのを見つける。


よく見ると、中から小さなハサミが覗いていた。


ヤドカリだ。


私はそれをそっと指先で拾い上げ、碧くんの目の前へと突き出す。


「ほら、ヤドカリ!」


今度は私が見せびらかす番だった。


彼は一瞬だけ驚いたように瞳を丸くした。


あとから、ふ、と低い呼吸の混ざった声で笑った。


その声があまりにも優しくて、私もつられて笑ってしまう。


まばゆい太陽の下での、他愛のない時間。


二人で笑いながら、小さな生き物たちを夢中で追いかけているうちに、気づいた時にはもう、帰るべき時刻が近づいていた。
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