One year left -家族ごっこ-
しゃがみ込んで、岩の隙間を必死に指先で探る。


私が拾ったのと同じ形で、同じ色をした、綺麗な桃色の貝殻。


それだけを、焦る心で見つけ出そうとした。


あった。


見つけた小さなひとつを、碧くんの差し出してきた手のひらの上へと、そっと置こうとした。


「そろそろ帰るよー!」


岩場の向こうから、岳くんと凛が大きく手を振りながら私たちを呼びにくる。


その、瞬間だった。


不意に、目の前の光が遮られる。


岳くんたちの近づく足音が聞こえるなかで、碧くんの大きな身体が、私の視界を真っ白な太陽光ごと遮った。


彼の広い背中が、外の世界に対する完璧な壁になる。


向こうから歩いてくる二人からは、私たちの姿はもう、何も見えない。


息が止まるほどの近さまで、碧くんの顔が近づいてきた。


驚く暇もないうちに、私の頬に大きな手が優しく触れる。


それと同時に、微かな、やわらかい音がして、唇の上に温かなものが重なった。


不意打ちの、キスだった。


あまりのことに頭が真っ白になって、あっけにとられたまま動けなくなる。


そんな私をからかうみたいに、彼は私の指先から、すんなりと貝殻を奪い取った。


「もらった」


片眉をわずかに持ち上げ、いたずらっぽく笑った碧くんは、そのまま私の耳元へと顔を寄せた。


「今日の萩花の笑ってる顔、可愛かった」


低くて、驚くほど優しい声が、鼓膜を直に震わせる。


ただそれだけで、耳の奥から脳までが、じんと甘く痺れていくのが分かった。


自分の心臓の音だけが、耳元でやけにうるさく響いている。


顔が、火がついたように熱い。


真夏の太陽光のせいなんかじゃない。


私は彼の放つ、痺れるような熱に浮かされてしまっていた。
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