One year left -家族ごっこ-
お母さんたちの元へ戻ると、碧くんが二人の前へ進み出た。


そして冷たいお茶のボトルを二人に手渡す。


「あら。碧くんが買ってくれたの?」


お母さんが声を嬉しそうに響かせて彼を見上げた。


「わざわざごめんね。ありがとう」


「萩花ちゃんもありがとう」


おじさんは私を見て穏やかに微笑みながらお茶を受け取った。


キャップを開け、温かいほうじ茶を口に含む。


けれど、喉を通る熱とは裏腹に、こめかみのドクドクとした痛みは治まりそうになかった。


頭の芯が、内側から重く膨れ上がっていく。


その時、館内に大きなピンポン、とチャイムが響いた。


「まもなく、屋外スタジアムにて、イルカショーが開演いたします」


女性の無機質なアナウンス。


「イルカショーだって。行ってみましょう?」


お母さんが待ちきれないようにおじさんの腕を引く。


おじさんも「そうだね」と歩調を速めた。


二人の楽しそうな背中が、再び順路の先へと進んでいく。
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