One year left -家族ごっこ-
私はボトルのキャップを閉め、重い頭を抑えるようにして、その後に続いた。


屋外スタジアムの席についた、その時だった。


「嘘!ないわ……」


お母さんが突然、耳元を押さえて声を震わせた。


「雅也(まさや)さんにもらった、真珠のイヤリングが片方ないの。どうしよう……」


おじさんの名前を呼んで、酷く慌てるお母さんの顔を見て、私はすぐに立ち上がった。


「私が探してくるから大丈夫だよ。お母さんたちは、ここでイルカショーを見てて?」


おじさんが慌てて腰を浮かす。


「いや、俺が探してくるよ」


私は首を振って、おじさんを席へと促した。


「いいんです。イルカショーは、二人に楽しんでほしいから」


お母さんが私の手を握りしめた。


「お願いね、萩花」


その言葉を背中に受けながら、私はスタジアムを後にした。


イルカショーの開演を待ちわびる、大勢の観客たち。


きらきらとした笑顔の波。


私はその流れに、一人、逆らうようにして暗い通路へと戻っていく。
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