One year left -家族ごっこ-
こめかみの奥が激しくドクドクと波打つなか、容赦のない館内の冷気が私の肌から体温を奪っていく。


襲いかかる頭痛を必死にこらえながら、私は今まで歩いてきた床や薄暗い水槽の隅をくまなく探し続けた。


どれくらい歩いただろう。


光の届かない通路の片隅、小さな水槽の影に、きらりと不気味に光るものを見つけた。


お母さんの真珠のイヤリング。


「……あった」


それをそっと拾い上げた瞬間、視界がぐにゃりと大きく歪んだ。


激しい眩暈と、頭の芯を重い鈍器で殴られたような強い痛みに耐えかねて、私は頭を抑えたままその場に崩れるように膝をつく。


冷たい床板から、冷気がじわじわと足元を這い上がってくる。


そのとき、静まり返った通路に急ぎ足の足音が近づいてきた。


「萩花」


低い声が、私のすぐ近くで焦ったように上(うわ)ずる。


碧くんが私の目の前に素早く膝をつき、彼の大きな強い手が、倒れそうになる私の両肩をしっかりと支えた。


「どうした?」


覗き込んでくる琥珀色の瞳が、隠しきれない激しい動揺を映し出している。


私は重い頭を抱えたまま、消え入りそうな声で小さく呟いた。


「ちょっと、頭痛がして……」
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