One year left -家族ごっこ-
セレクトショップを出た私たちは、ビルの屋上へとつながる長いエスカレーターを上った。


頭上に広がったのは、遮るもののない圧倒的な青空だった。


アスファルトの代わりに敷き詰められた芝生の上を、お洒落な服を着た都会の若者たちが、すれ違う他人に視線ひとつくれず、思い思いの速度で通り過ぎていく。


強烈な太陽光が、巨大なビルの壁面に撥ね返って、私たちの足元に影を落としていた。


「わあ、東京の空って、ビルに切り取られて四角く見えるのね」


お母さんが、買ってもらったばかりの小さな革細工のチャームを愛おしそうに撫でながら、眩しそうに目を細める。


おじさんはその横顔を見つめて、嬉しそうに目元を緩めていた。


「萩花ちゃんのおかげで東京観光に来れたね」


「そうだったわね」


まるでお茶目ないたずらでも思いついたかのような顔をして、お母さんは私を振り返り、可愛らしく首を傾げてみせる。


「萩花ちゃんは、どこか行きたいところはあるかな?」


おじさんが優しく覗き込んでくる。


「ないです」


お母さんの無邪気な楽しさに合わせるように、私は声を華やがせて、明るい笑みを返した。
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