One year left -家族ごっこ-
ホテルのレストランで少し贅沢な夕食をとり、おじさんと碧くんの部屋を見送って、私とお母さんはツインの客室へと入った。


カードキーを差し込んだ瞬間に点灯する、ホテルの薄暗い間接照明。


都会の夜の人工光が、窓の外に見える無数のビルの明かりと混ざり合って、部屋のなかに曖昧な影を落としていた。


お母さんは部屋に入るなり、ベッドの上に今日買ってもらったばかりの革細工のチャームを並べ、嬉しそうに何度もそれを指先で撫でていた。


「あのね、萩花。雅也さん、お盆休みは私たちを温泉に連れていってくれるんだって」


お母さんが、あどけない少女のような笑みを浮かべて私を振り返る。


「こんなに私のことを大事にしてくれる男の人は、雅也さんが初めて。やっぱり、私の選んだ人に間違いはなかったわ」


自慢げに微笑むお母さんの耳元で、真珠のイヤリングが揺れていた。


「良かったね、お母さん! 私も、本当に嬉しい!」


私はベッドの上で跳ねるようにして、まるで自分のことのように喜んだ。
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