One year left -家族ごっこ-
お風呂から上がり、冷房の効いた自室に戻っても、呼吸を塞ぐほどの渇きは少しも治まらなかった。 


その強烈な渇きに我慢できなくなって、私は冷たいお水を求めて、もう一度ドアを開けた。


静かに階段を下り、一階の廊下を進んだそのときだった。 


リビングのドアの隙間から、薄暗い明かりが細い一本の線になって漏れているのに気がついた。


喉の通り道が小さく鳴る。


その仄暗い光の中に、また碧くんが一人でいるんだって、分かってしまった。


私はその場に足を止めて、一瞬だけ激しく躊躇した。 


いまリビングに入ったら、お盆休みの旅行を断って、あのひとのことを考えている彼と、二人きりになってしまう。


逃げ出したいって、身体の芯でブレーキがかかる。 


けれど、気道の奥を灼くような渇きはもう限界だった。 


私は小さく息を吸い込んで、意を決して、薄暗いリビングのドアへと手をかけた。
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