One year left -家族ごっこ-
そこから胸元へ向かって、一本ずつ、じわじわと吸い付くように這い上がってくる指の動き。


焦りと強烈な羞恥心に突き動かされるようにして、私は狂ったように脈打つ胸の真上で、必死に彼の手首を掴み取った。


「やめて……」


「なんで?」


「触らないで……」


「触ってほしくないの?」


碧くんは大きな手を止めることなく、私の掴んだ指先をその熱い体温で包み込みながら、意地悪に問いかける。


これ以上、彼の瞳を見ていられなくて、私はたまらず横へと顔を背けた。


「見ないで、見られたくない……」


けれど、その抵抗すら予測していたように、碧くんの大きな指先が私の顎に触れ、強制的に正面へと顔を向かされる。


私の行く手を阻むように向けられた彼の瞳は、いつだって私のすべての逃げ道を完璧に包囲していた。


どうせ本当のことを言うまで、私の心の深淵を覗き続ける。


逃げられないと悟ったからこそ、自ら進んで白状する道を選んだ。
< 271 / 354 >

この作品をシェア

pagetop