One year left -家族ごっこ-
「でも、家に私たち二人きりだと、おじさんにも変な心配かけちゃうね」


「俺は友達の家に泊まることになってるから、大丈夫だろ」


「誕生日だから?」


「そういうわけじゃないけど。そう言っておいたほうが、萩花が安心すると思ったから」


私の輪郭をなぞる彼の指先は、胸の澱(よど)みを先回りしてすべて吸い上げていく。


「……ありがとう。あと、誕生日、知らなくてごめんね」


「言ってないんだから、当たり前だろ」


彼は、ふっと鼻で笑った。


「親父すら忘れてるくらいだからな」


悪意の一切ない、ただ温泉旅行の楽しみに浮き足立った大人の、あまりにも無邪気な忘却。


だからこそ、おじさんは碧くんを置いて平然と温泉旅行に行ったのだと、胸のなかの引っかかりが、すとんと綺麗な形を結ぶようにして理解する。


「たしか、温泉旅行って二泊三日だったよな?」


「うん、そうだよ」


「だったら、明日も親父たちは帰ってこない」


その言葉の意図が掴めなくて、見上げる視線をわずかに揺らす。


碧くんは私の頬からそっと手を離すと、片肘を立てたまま上から私を覗き込んだ。


「明日、祭りに行く?」


「行きたい!」


お祭りへ行けるという純粋な喜びに、私の声が弾む。
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