One year left -家族ごっこ-
「決まりだな。とりあえず、風呂に入るか」


「うん。先にいいよ」


「いや、一緒に」


彼は唇を私の耳元へと寄せ、低く甘やかな息を吹き込んできた。


「嫌だよ」


「なんで?」


私の耳や首筋へと、何度もキスを落としてくる。


「恥ずかしいから」


「今更だろ」


碧くんは口元を優しく緩めると、再び私の身体に覆い被さってきた。


「碧くん、やめて」


「やだ。一緒に入るって言うまで、やめない」


そう言って、甘えるように唇を塞いできた。


私の服の袖をぎゅっと大きな手で掴んだまま、まるで離れたくないとねだるように、何度も、何度も、私の唇に軽い口づけを繰り返した。


いつもは傲慢な彼が見せる可愛さに、お腹の奥が締めつけられて、再び疼き始める。


私の従順な肉体は、そのずるい甘え方に翻弄されながら、すでに完全に覚えてしまった彼の圧倒的な熱を、もっと欲しいと本能で欲してしまっている。


このままもう一度、あの熱に融かされてしまいたい。


甘い泥をすするような欲望に溺れそうになりながらも、さっきまで彼の執着をすべて受け止めていた身体は、とっくに限界を訴えていた。


私は唇が離れた一瞬の隙を突いて、必死に顔を横へと背けた。


「碧くん、怒るよ。先にお風呂入ってきて」


私の精一杯の抵抗に、彼はふっと笑うと、私の髪を優しくひとなでして身体を離した。


「はいはい」


碧くんの大きな影が、部屋のドアの向こうへと消えていく。


パタン、と静かにドアが閉まった暗闇のなかで、私ははぁと深いため息を吐き出した。


彼に触れられた場所だけが、いつまでもとろけるような疼きを伴って熱く火照り続けていた。
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