One year left -家族ごっこ-
彼はおもむろにベッドの端へと腰を下ろして、シーツを軽く叩いた。


「おいで」


低く、柔らかな声に、私の心臓がドキドキと音を立てる。


引き寄せられるようにしてその胸のなかに飛び込むと、大きな腕がすぐさま頭の下へと滑り込んできて、身体を丸ごと包み込むようにして腕枕をされた。


「首、痛くない?」


「……大丈夫」


「それなら良かった。おやすみ」


彼は私の頬へ触れるだけの愛おしいキスをした。


そうして満足したように微笑んで、すんなりとその綺麗な目を閉じてしまう。


部屋の暗闇に溶け込むように、静かな呼吸の音だけが、嘘のように規則正しく響いていた。


……本当に眠ってしまったのだろうか。


息を潜めながら、そっと、指先を彼の肌へと伸ばした。


彫刻のように端正な輪郭に、なぞるように人差し指を沿わせていく。


目を瞑ったまぶたには、月明かりの優しい陰影が重なって、くっきりとした綺麗な二重の線が浮かび上がっていた。


すっと通った鼻の綺麗なラインをそっとなぞり、それから、さっきまで私のすべてを強引に奪い去っていた、形の良い唇を指先で小さくつまんでみた。


まるで、甘い果実を確かめるみたいに。


けれど、碧くんは何の反応も示さない。
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