One year left -家族ごっこ-
「なにしてるの?」


私の耳元に直接、低く、驚くほど冷静に碧くんの声が響いた。


頭のなかが真っ白になって、私の身体は、指先ひとつ動かせないほどにすくんでしまう。


ドクドクと暴れる心臓の音が、静かな黒い部屋のなかに筒抜けになってしまいそうだった。


「その手、どうするの?」


暗闇のなかで、彼がじっと私を覗き込む。


応える言葉など見つからない。


「もしかして、一人でしようとしてた?」


逃げ場を完全に塞ぐようなその意地悪な問いかけに、私の心はおもちゃみたいに弄ばれて、精神的に追い詰められていった。


「違う……っ」


首を振って必死に否定しながら、私はこれ以上の恥ずかしさから逃れるようにして、下着の中から自分の手を慌てて引き抜いた。


けれど、彼は、そんなことで私を解放してはくれない 。


「さっき、もう限界って言ったのは、誰だっけ?」


碧くんは口角を上げると、私の引き抜かれた手を無視して、下着の中に自分の大きな手を迷いなく強く滑り込ませてきた。


「……あっ、……や……っ!」


敏感になりすぎたそこを、彼の容赦のない指先でぴったりと割り込まれて、私の喉の奥から甘い吐息が漏れ出す。
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