One year left -家族ごっこ-
土手沿いの桜並木を自転車で走りながら、希歩が前を向いたまま言った。


「数日前は満開だったのに」


つられて見上げると、薄桃色の隙間から、寂しげな茶色い枝が覗いている。


「半分くらい散っちゃったね」


凛が並走しながら、惜しむように呟いた。


春の突風が吹くたびに、頭上から大量の花びらが引き剥がされていく。


もう来週までは持たないな、と胸のなかでそっと思った。


視界を染める桜吹雪の中を、自転車で駆け抜ける。


どこか甘く、少し青臭い桜の匂いがする。


アスファルトの上には、どこまでも続く桃色の絨毯が敷かれている。


落ちた花びらをタイヤで踏み潰しながら一気に坂道を下った。


さよならを告げるように、いくつもの花びらが頬を冷たくかすめていく。


そうだ。


この道をみんなで並んで通るのも、今年が最後なんだ。
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