One year left -家族ごっこ-
いつもダンス練習をしている橋の下に着き、自転車を停めた。


夕紗が慣れた手つきでスマホを取り出し、お気に入りのトラックを適当に流し始める。


コンクリートの壁に反響する音に合わせて、それぞれ自由にウォームアップを始めた。


音に身を委ねて身体を動かすうち、心にかかっていた枷(かせ)が外れるように、どんどん気持ちが軽くなっていく。


そして、決まってお父さんのことを思い出すんだ。


「んじゃ、本番いくよー」


夕紗の声で音楽が始まった瞬間、全ての雑音が消えた。


ただ音と私だけがこの世界に引き残される。


深く膝を沈めてリズムの波に身体を滑り込ませ、そのうねりに乗るように胸をバウンドさせる。


ここには誰もいない。


這い上がる重低音が、足の裏を通じて全身を心地よく震わせた。


地面を蹴って激しいステップを踏む。


腕を伸ばして空を切った。


そして触れられない気配を抱きしめるように体をひねる。


その余韻は消えることなく、滑らかなウェーブとなって、頭から足元へと抜けていった。
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