One year left -家族ごっこ-

【鼈甲】

八月中旬の十九時。


西日の名残である薄い赤みが、いまだ空の底にほんのりと滲んでいた。


夜の暗闇がゆっくりと世界に混ざり出していく景色のなか、神社へと続く上り坂には、すでに厚い人波ができていた。


私は碧くんの隣に並ぶのを拒み、あえて彼の大きな背中の一歩後ろを選んでついていく。


せめてもの抵抗のつもりで少しだけ歩調を緩めてみるけれど、碧くんは何も言わずに、私の小さな拗ねた気配をただ静かに受け止めるようにして、私の歩幅に合わせてゆっくりと前を進んでいく。


本当は、大人っぽい黒のワンピースを選ぶつもりだった。


けれど、部屋で着替えた私の姿を見た彼は、眉間に皺を刻み、“あの男のために着た服は嫌だ”と不機嫌な声で言い放ったのだ。


一体いつの話をしているのだろうと、私は呆れてしまう。


結局、彼の頑なな態度に押し切られるようにして、私はいつもと変わらない大きめのTシャツにショートパンツという、ひどく日常的な格好のまま家を出ることになってしまった。


すれ違う女の子たちは、誰もが色鮮やかで美しい浴衣に身を包んで、楽しそうに笑い合っている。


私は歩きながら、その華やかな色彩をただぼんやりと目で追っていた。
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