One year left -家族ごっこ-
碧くんはふと足を止めると、私の腕をそっと掴み、自分のすぐ隣へと優しく引き寄せた。


「……ほら、金魚」


静かな声に促されて視線を向けると、魚すくいの鮮やかな屋台が広がっていた。


「あ、本当だ……。可愛い」


私の口元がかすかに緩む。


「やる?」


彼が、耳元に届くような近い距離で私の顔をのぞき込んできた。


明るい裸電球の光の下、水槽のなかをひらひらと泳ぎ回る赤い金魚たちを見つめながら、私は静かに首を横に振る。


「ううん、私は見てるだけでいい」


「なんで?金魚、可愛いって言っただろ」


「もし私が連れて帰って、すぐに死なせてしまったら可哀想でしょ」


碧くんは何も言わずに、ポケットから財布を取り出すと、迷いのない手つきで店主に小銭を支払って、一本のポイを受け取った。


「死なないように、俺が一緒に育てる」


私の耳の深くへとしみ込むような静かな響きでそう呟きながら、彼はたくさんの金魚がひらひらと泳ぎ回る水槽の前に、その大きな身体を折り曲げてしゃがみ込んだ。
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