One year left -家族ごっこ-
普段の私なら、きっと慌ててカバンを開けて、お釣りが出ないように必死に小銭を数えて財布を出していただろう。


けれど碧くんの前でだけは、差し出してくれたものをごく自然に、素直に受け取ることができている。


「ありがとう、美味しいね」


そう言って笑うと、彼はどこか満足そうに、その綺麗な目元をふっと緩めた。


すれ違う人波を避けるようにして、長い腕を私の背中側にすっと回し、自分の大きな身体で周囲の混雑から守ってくれている。


「あ、射的だ……」


おもちゃやお菓子の景品がひな壇に並ぶ屋台を見つけて、小さく声を漏らすと、碧くんは私の視線の先を追い、ごく自然な動作で店主に小銭を支払った。


「ほら、やってみなよ」


彼が店主から受け取ったコルク銃を差し出してきた。


同時に、抱えていたビニール袋の紐を、彼の大きな左手の指先へすっと引っ掛けて預かってくれた。
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