One year left -家族ごっこ-
「あれ、碧じゃん!」


「嘘、本物? ――きゃー! 合月くんだ!」


人混みの向こうから、他校の生徒らしき賑やかな声が上がった。


碧くんは、どこにいても一目で周囲の目を引いてしまう。


本人は、自分の名前を呼ぶ黄色い悲鳴など視界にすら入れていない様子で、淡々と歩き続けようとしていた。


けれど、周囲の集まった視線は、当然のように彼の隣を歩く私の姿へと向けられる。


「ねえ、横にいるの誰?」


「彼女だってよ」


「え、でも親が再婚して姉ができたって聞いたけど」


「どう見てもあれは姉じゃなく妹でしょ」


悪意のない、だからこそ刃のように剥き出しの噂話が、ざわざわとした人混みの隙間をすり抜けて、私の耳の裏へと直接届く。


「可愛いとは思うけど……彼女だったら、なんか合月碧にはちょっと地味じゃない? 似合わない」


その決定的な一言が鼓膜を叩いた瞬間、私の胸がドクンと激しく脈打って、刃物で突かれたように鋭く締めつけられた。
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