One year left -家族ごっこ-
私なんかじゃダメだったんだ。


彼の隣に相応しい人間になれなくて申し訳ない。


そんな静かな羞恥心と絶望感に襲われて、私は視線を完全に地面へと落とし、自分の身体をこれ以上ないほど小さくすくませてしまう。


碧くんの前から思わず逃げてしまいたくなるほどの静かなパニックのなかで。


それまで隣を歩いていた彼は、不意にその場にぴたりと足を止めた。


「萩花、顔上げろ」


ざわざわとした人混みの喧騒を力ずくで押し退けるような、はっきりとした声が上から降ってきた。


その強さに導かれるようにして、私はすくんでいた首をゆっくりと動かし、地面から彼の方へと顔を上げる。


見上げた私の視界に飛び込んできた碧くんは、どこまでも真面目な顔をして私だけを見つめていた。
 

その退くことを知らない強い眼差しに射すくめられ、私の胸の脈動が激しく跳ね上がる。


彼は私の耳を外の雑音から守るようにして、大きな両手で優しく包み込んだ。


そのまま私の顔のほうへと、自分の顔をぐっと至近距離まで寄せてきた。
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