One year left -家族ごっこ-
私の視界のなかに、彼の琥珀色の瞳が迫る。


「……誰が何を言おうと、」


その瞳のなかに吸い寄せられ、呼吸の仕方を忘れてしまった。


「おまえは、俺の彼女だ」


その明確な宣告を裏付けるように、彼は誰もが見つめるなかで、躊躇なく私の唇を深く、深く塞いできた。


周囲から、息を呑むような短い悲鳴とざわめきが一気に沸き起こる。


けれど、彼の大きな手のひらに顔を包まれ、息が詰まるほどの深い熱に満たされて、口内を隅々まで融かされていく私の世界のなかでは、もう周囲の雑音なんて何ひとつ聞こえなくなっていた。


思考は白く染まり、私の顔を覆う彼の大きな手のひらのあたたかさだけが、確かな現実味を持って私を満たしていくのだった。


碧くんは周囲のざわめきに一度も視線を向けることなく、ただ私の手を繋ぎ、誰もついてこられない神社の奥へと迷いなく歩き出した。


参道の足元にぽつぽつと並ぶ、和紙の置き灯籠の低いオレンジ色の光に導かれるようにして、私たちは長い石段を静かに下りていく。
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