One year left -家族ごっこ-

【愛】

お祭りの喧騒(けんそう)を遠くに残したまま、私たちは静まり返ったリビングへと帰ってきた。


「金魚、どこに入れよう」


オレンジ色の照明が照らす室内のなかで、私は両手で大切に抱えていた、水が入った透明なビニール袋をそっと見つめる。


夜遅い今の時間では、金魚を飼うためのきちんとした水槽を買えるお店はどこも閉まってしまっていた。


行き場を無くした小さな命を前に、私がどうしていいか分からず困惑していると、隣に立つ碧くんが、ふいに思い出したように呟いた。


「……そういえば」


彼はそう言ってリビングのドアを開けると、廊下の壁際にある白い収納棚の前で足を止め、その両開きの戸をゆっくりと開けた。


日用品のストックや掃除用具が並ぶ、その真っ白な空間のいちばん最下段。


ずっと使われずに暗い奥のほうへと追いやられていた、古い段ボール箱を、おもむろに引きずり出してきた。


箱の蓋を開けて取り出されたのは、少しいびつな形をした、昔ながらのガラスの金魚鉢だった。


「……可愛い」


そんな素直な感嘆(かんたん)の言葉が自然と零れ落ちてしまう。


プラスチックの水槽とは違う、豊かな厚みのある透明な硝子。
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